転落

1月で小児科の研修が終わり、今は緩和ケアを回っている。
この緩和ケアは、研修医の臨床研修の中でも選択コースといわれるもので、僕が自分で選択したものだ。
とはいえ、緩和を選んだのは、緩和に興味があるからではなく、
しんどい小児科のあとはゆっくり休みたい、と思ったからだ。


実際、予想通り、というか予想以上に緩和は楽で、毎日好き放題やらせてもらっている。
緩和の先生に「ほうっておいてください。」と直訴したのが功を奏したようだ。


さて、緩和に来て暇になって最近思うことがある。
それは情けない話だが、出会いがほしい、ということだ。


小児科にいるときは忙しくて、ひたすら仕事に頭のメモリーをさいていたので、
出会いや女のことなど考える暇もなかった、というのもひとつではある。
が、一番大きいのは、小児科では、子供の親御さんに感謝されるのが日常であり、
なんだかよくわからないが、「自分が色んな人に認められ、必要とされている感じ。」
がものすごくあったのだ。難しくいうと、他人からの「承認」が足りていたわけだ。


で、今はというと、僕は緩和では患者さんに会いにいかないことにしているし、
僕がいなくなったところで、緩和の人たちが困ることは皆無だ。
そうやって暇な時間を大量につくりだしたわけだが、
ふと気がつくと、ここ数日で、自己評価が急速に下落していた。
毎晩よくわからない劣等感にさいなまれるているし、
1月まで気にもとめなかった高校や大学の同級生の動向が妙に気になっている。
まわりの人間が自分よりはるか先を進んでいるように思えるのだ。


さっきと同じ言い方をすれば、たぶん僕は「承認不足」に陥っているんだろう。


「出会い」がほしいのは誰かに今の自分を承認してもらいたいからなんだろうと思う。
まわりで感謝してくれる人がいなくなった途端にこれだけ自分が崩れてしまうのは
あまりに情けないが、さてどうしうしたらいいのか、実はよくわからない。
ただ、30才中盤とか40才になってまで、こんな思いはしたくないな、とも思う。
うーん、あと数年しかないな....。