誕生日

お蔭様で、30歳になりました。
お祝いの言葉を下さった方には、この場を借りて御礼申し上げます。
ちなみに、当日は妻と二人でシャーロットストリートにあるインド料理屋に行ってきました。
ロンドンで今まで食べてきた中でも5本の指に入るくらいのおいしさでした。
良い店を探してくれた妻に感謝です。


さて誕生日ネタはここまで。


最近、組織マネージメントの授業で妙に日本ネタが取り上げられるのが気になっています。
1回目は、エベレストに登頂した日本人登山家が、途中で遭遇した瀕死の登山家達を助けず、
自分の成功のみを追及した、、、という90年代の新聞記事が取り上げられました。
記事は、登山家間での競争が激化したせいで、過去の登山家達の間にあった共同体意識、助け合いの精神が消え去ろうとしている、というような嘆きで結ばれていました。
ただ、講師がこの記事を選んだのは、別に、助けるべきであったとか、助けるべきでなかった、という議論をするためではなく、プロジェクトを開始する前にミッションを明確にしておくことが大切である、という趣旨で
いわば失敗事例として取り上げられたのでした。


議論自体も別に日本人や登山家を直接非難する方向には向かわず、
わりと粛々と進んだので、私は敢えて発言しませんでした。
正直記事を見たときは、(潜在的な)ジャパンバッシングの記事だと思ったので、
一瞬頭に血が上りました。
が、数日前にBBCで中国人の研究者がチベットに関する発言を求められて、
「何で、欧米諸国はパレスティナを見殺しにしている一方で、チベットのことをとやかく言うのか?」的な発言をして、
なんとなくスタジオに冷たい空気が流れていたのを思い出して、自制しました。
「他の国も似たようなことをやっているのに何でうちだけ?」というような自己弁護は間違ってはいないのですが、
(少なくとも英国においては)印象としてはあまりよくはありませんね。
私の場合は非難もされていないので、あえて言う必要はないかな、と思い留まりました。



もうひとつは、組織文化の成功事例としての日本。
日本は不確実性を避け、個人の能力に頼らないようなシステムを構築している、という解説がなされ、
トヨタの例を挙げながら、説明が続くのでした。
マネージメントの講義ではトヨタが成功例としてやたら出てきて、
「日本はトヨタだけではないよ。。」といいたくなります。
実のところ、日本的な特質を持ちつつ、不確実性もある程度許容している、、、という説明がなされたシンガポールや香港のシステムのほうがよっぽどすごいのじゃないか?と思ったのですが、そっちのほうの説明はあんまりありませんでした。


英語情報が大量に発信されている香港やシンガポールと違い、日本はどことなく未知の国、、という存在のようで、
それだけに、講師の興味をかきたてるのか、なぜか、話はその後、日本を見習おう的な方向に進んでいったのでした。


ロンドンでは日本の話題に触れることは多くはありませんが、日本の占めるポジションというのはとても独特なようで、
出回る日本製品の多さに比して、英語情報の少なさから、未だ遠い未知の国という印象を与えているようです。


まあ、国の印象というのは視座が変われば当然変わってくるものなので、
米国から見た日本の印象はロンドンのそれとは当然違うでしょう。
また、いわゆる大国といわれない国に行けば、印象はまたガラリと変わります。
個人的な経験で言えば、パキスタンポルトガルを旅行したときに現地の人間から
パキスタン(もしくはポルトガル)は小国だが、日本は大国だから。。。」というようなことを言われたことがあります。
そのときは、私はうかつにも「いえいえ、日本も小国だから。。」というような返答をしてしまいました。
今思うととても失礼な返答で、日本が小国だったら、それより、人口も国土も経済力も小さい国(世界の大半)はどうなるんだ???という感じがしますが、当時はそこまで考えが回りませんでした。。。


今でも日本人が英語で書いた「Japan is a small country....」で始まる文章を目にすると、自分の失敗を思い出しつつ頭を抱えたくなりますが、まあ、自分達の国の姿を相対化して把握するというのは難しい、ということでしょうか。これは日本に限らずいえることなのかもしれませんが。